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アラブでお菓子のハナシ、ゴハンの時間

シリアから始まったアラブ菓子・料理研究。現在エジプトで活動中。

バクラワを巡る冒険

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何層もの薄い生地の間にナッツが詰まったバクラワ。アラブ・中東で最も有名なお菓子です。日本ではトルコのお菓子として知られるようになりましたが、実は中央アジアやコーカサス、北アフリカなどでも見られます。
“バクラワ”というのはアラビア語の呼び名で、国や地域によって”パクラワ(グルジア)”、”バグラヴァ(トルコ)”などと発音が微妙に異なります。その語源は、諸説ありますが、その一つに”四旬節のお菓子”を意味する「Baki-halva」というアルメニア語だと考えられる説があります。四旬節はキリスト教の宗教行事。それは、四旬節の日数にちなみ、40枚もの生地を重ねて作られたと言いますアルメニア人の「Baki-halva」はその後、オスマン帝国に持ち込まれ、トプカプ宮殿の菓子職人の手で競うように作られ、長い時を経て、現在私たちが口にしているバクラワの形に発展しました。
トルコ語で“バクラワ”という語が最初に登場したのは15世紀前半に詠まれた詩であるとされています。
アラビア語では、13世紀ごろに書かれた料理本に“バクラワ”という単語こそ登場しませんが、それに似たレシピが掲載されています(もっとも、これら以前にも、呼び名は異なるものの、バクラワの起源と思われる菓子が様々な文献に登場します)。

現代のバクラワに使われるのは、“フィロ”という薄い生地です。アラビア語圏ではこの生地を「アジーン・バクラワ(バクラワ生地)」、「アジーン・ラキーク(薄い生地)と言います(エジプトでは「グッラーシュ」と呼んでいます)。
多くの町中のお菓子屋さんでは、この生地からバクラワを作ります。熟練の職人たちが、つきたての餅のように柔らかな小麦粉の生地を、透き通るほどに薄く伸ばしていく手際の良さは、見ていて気持ち良いものです。打ち粉が工房内に舞い上がって充満し、職人の髭や髪の毛は真っ白になります。私がシリアのダマスカスで学んだ菓子工房では、バクラワを一斉に作る日、あるお楽しみがありました。余った生地に炒めたひき肉を包んでオーブンで焼いた「ラハム・ビアジーン」です。作業がひと段落ついて、大きな鉄板の上の熱々のラハム・ビアジーンを皆で囲んだことは、とても良い思い出です。
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一般にバクラワは、サムナ(澄ましバター)などの油脂を塗りながら重ねた生地でナッツを挟んで焼き、最後にシロップを浸み込ませるという手順で作ります。家庭と違い、大量に作る菓子店では、油脂を生地一枚一枚に塗る代わりに、あらかじめ重ねておいた生地の上から、熱した油脂を流しかける方法を取ることもあります。

生地の厚さやナッツの使い方には地域ごとの特徴がみられます。トルコのバクラワは、レバノン、シリア、エジプトなどアラブ諸国のそれと比べ、ナッツをより細かく砕き、生地は薄く、シロップを多めにかけるという印象です。

イランでは少し厚めの生地に、ほぼ粉状のナッツを用います。
tイラン

グルジアでは、フィロではなく、通常のパイに近い生地が使われているのを見かけました。
vグルジア

ピスタチオやクルミ以外のナッツ類、例えばアーモンドやカシューナッツなどのバクラワも珍しくありません。さらに、チーズやクリームを生地の間に挟むこともあります。エジプトではコーンスターチで牛乳にとろみをつけたクリームを挟んだものがあり、「バクラワ・クレーマ」や、「バクラワ・ビルムハラビーヤ※1」と呼ばれています。シリアでは「イシュタ※2」を挟んだバクラワが「ナンムーラ」と呼ばれますが、お隣のレバノンで「ナンムーラ」と言えば、粗挽きセモリナ粉のケーキ(エジプトで言う「バスブーサ」)を指します。このように、同じ呼び名のお菓子でも、国や地域によって全く違うことがあります。

バクラワは、その形状や食べ方も、各地域で差があります。
アルメニアの菓子店に並ぶバクラワは、ナイフとフォークを使って食べるような、少し大きめのものが主流のようです。
xアルメニア

多くの国ではひし形のバクラワが多いのに対し、ギリシアでは三角形が目立ちます。
cギリシア

バクラワと同じ材料を使った、いわばバクラワの兄弟のようなお菓子も豊富です。細巻きのように生地でナッツを巻いたり、小さくカットした生地にシュウマイの要領でナッツを包んだり。それぞれが違った名前で呼ばれています。
バクラワの味わいは国や地域、またお店によっても実にさまざまです。食べ比べてみるのも楽しいかもしれません。

※1牛乳をコーンスターチなどで凝固させたデザート。
※2水牛の乳からできた脂肪分の高いクリーム。クロテッドクリームと同じ製法。シリアやレバノンでは、牛や羊の乳から作られるのが一般的で、エジプトの物よりも脂肪分が低くあっさりしている。

この記事はカイロ日本人会会報「パピルス」2014年11・12月号で執筆した物に加筆しました。
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